EXポリリン酸誕生ストーリー

 
 

EXポリリン酸誕生ストーリー

柴肇一博士とノーベル賞化学者との出会い

アーサー・コーンバーグ博士

ポリリン酸を発明した柴肇一博士は、遺伝子の研究や分子生物学の研究などが盛んであった1993年、 北海道大学で遺伝子の研究をしていました。その頃、1959年にDNAの生合成のメカニズムを解明し、ノーベル賞をとったアーサー・コーンバーグ博士が、ポリリン酸の研究員を募集しているという話がありました。

コーンバーグ博士は、DNAが増え、同じコピーを作り、細胞が分裂するとまた同じコピーを作るというような、情報をそのまま保ちながら親から子に引き継いでいく時にどういうシステムで引き継ぐのかという研究でノーベル賞をとった科学者です。

遺伝子研究者にとっては神様のような存在で、高校の生物の教科書にもでてくるくらいの高名な方です。そのコーンバーグ博士からの求人ということで、ポリリン酸というまったく未知の物質の研究はとても面白いものに違いないと飛びついたのが、柴先生とポリリン酸の出会いとなりました。

 
アーサー・コーンバーグ博士

実際研究を始めることになってわかったのは、柴博士は、世界で初めてポリリン酸をメインテーマに研究する研究者になったということでした。ただ、研究が始まった当初は、基礎的な研究ばかりで、なかなか研究が進まず、段々とわかってきたのは、大腸菌のような下等な生物から人間に至るまで、すべて細胞の中にポリリン酸が存在するということでした。

ポリリン酸は、人間にとっても生物にとっても非常に大事なもので、とても基本的で、原始の生物が誕生する時代から体の中に存在する、生物の機能を補う一つの大事な物質だと言うことが明らかになってきました。全ての生物にあると言うことは、機能も何も分からないけれど、絶対に大事な物質に違いない、という事で、さらに研究を進めていったのだそうです。そして、ポリリン酸を傷口につけると傷が早く治ったりとか、バイオ細胞の中に入れると、細胞が早く増えたりとか。数々のそのような現象から、“再生”と言う働きが見つかってきました。

生体の機能の再生にすごく関係がありそうだという事がだんだん判明し、当時は再生医療も始まったばかりで、もしかすると、そちらにも活かせるかも知れないということで、柴博士はさらに興味を持ってずっと研究を続けました。

ポリリン酸の誕生

アーサー・コーンバーグ博士

体の中にあるポリリン酸は、形が整っている、長さが整っているということがわかりました。また、ポリリン酸は一般にいろいろなところに存在し、食べ物の中に元々入っていますし、また天然の中にもあるものなので、自然に食べていることもわかってきました。食べ物の中に入っているものや、食品添加物になっているポリリン酸は、長さがバラバラですが、人の体の中にあるポリリン酸は、長さが整っています。人体内のポリリン酸は少し長めなのだそうです。

人間の体の中に存在するポリリン酸は、いろいろな長さのポリリン酸の中でも、中くらいの長さで、“中鎖”ポリリン酸です。そしてこのポリリン酸だけが傷を早く治したりとか細胞を増やしたりするということが判明しました。長さが短いと、この働きがなく、長い方がよいことがわかりました。

ポリリン酸の将来

分割ポリリン酸は再生医療の医療材料として開発が進んでおります。非常に安全な物質でもともと生体内で組織の再生に寄与していることもあり、今後は化粧品だけでなく、医療の分野でも幅広く活用されることが期待されています。

柴肇一博士の略歴

アーサー・コーンバーグ博士

1991年大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。北海道大学理学部に助手として赴任後、1993年より米国スタンフォード大学医学部生化学科のアーサー・コーンバーグ教授の研究室に博士研究員として留学し、生体内ポリリン酸の研究を開始した。1995年より北海道大学大学院工学研究科助教授として赴任し、ポリリン酸の生理機能研究をさらに進めた。その結果、ポリリン酸が繊維芽細胞増殖因子(FGF)の機能を増強することを発見し、組織再生促進に有効な物質であることをつきとめた。

その後組織再生機能が高い分子量のポリリン酸を同定し、分割ポリリン酸として各種医薬関連製品に応用する技術を開発した。この技術をもとにベンチャー企業を立ち上げ、現在リジェンティス株式会社代表取締役兼研究開発ディレクターとして研究開発と経営に従事している。分割ポリリン酸の技術を用いたビジネス化で2005年に第5回バイオビジネスコンペJAPANにおいて優秀賞を受賞している。

コーンバーグ博士

アーサー・コーンバーグ博士

アーサー・コーンバーグ(Arthur Kornberg, 1918年3月3日 - 2007年10月26日)は、アメリカ合衆国の生化学者で、DNAの生合成のメカニズムを解明し(DNAの複製酵素の研究)、ニューヨーク大学のセベロ・オチョアとともに1959年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。彼は1951年にアメリカ化学会の酵素化学分野におけるポール・ルイス賞を受賞し、1962年にイェシーバー大学からL.H.D.学位を得た。また1979年にアメリカ国家科学賞を受賞した。

アーサー・コーンバーグ教授は晩年(1990年ごろ)よりスタンフォード大学で生体内に存在するポリリン酸の研究を始め、その後はDNA複製の研究からポリリン酸研究にテーマをシフトさせ2007年に他界するまで生涯現役の研究者として活躍した。

 

亡き妻の意志を引き継いだ、ポリリン酸の研究

アーサー・コーンバーグ博士

コーンバーグはノーベル賞受賞のテーマであるDNA複製の研究から晩年ポリリン酸の研究にテーマを変えた。優秀な研究者であった彼の最初の妻がポリリン酸の代謝酵素を発見していたが、DNA複製の研究でノーベル賞を受賞したためDNAのテーマに没頭せざるを得ず、ポリリン酸の研究は長年塩漬けになっていた。

最初の妻に先立たれたコーンバーグはいつか彼女の遺志を継いでポリリン酸研究を進めることを考えていたが、1990年代に入ってやっとポリリン酸の研究を再開した。